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【読書感想】検証 働き方改革 問われる「本気度」 #勤労感謝の日

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「バランス」が取れた良書だと思います。「官民一体となって出した働き方改革の答えはコレだ!」と押し付けがまくしくありませんので。「民」はそれぞれ独自の考えを示して、「官」はどこまで改革に手を出せば良いのかを問いかけています。

改革は押し付けない方が良い

押しつがましくない方が良いとする理由は、このポスターです。自分は大阪に住んでいるため現地で見ていませんが、東京メトロの霞ヶ関駅ではこんな意見広告が貼られていたそうですね。個人的にサイボウズさんの大阪オフィスにお邪魔することもあります(新しいタブで開く)ので、霞ヶ関にこういうぽスターが貼られていても「さもありなん」という感じですが。

あと、無双かつ辛口のまとめサイトである「市況かぶ全力2階建て」さんにもしっかりとまとめられていますね。

労働条件?そんなの個別交渉で決めればええやん

そもそも労働もミクロ経済学で言うところのサービスです。会社で働くということは、会社員は労働サービスを売り、会社がそのサービスを買うという取引をしていることになります。そのサービスの取引について「プレミアムフライデーの導入を!」と言って、エライ方々が声を揃えて口を挟むと、先日紹介した最低賃金のお話(新しいタブで開く)と同じように何らかの副作用が決まります。

個人的な考えですが、1年間365日のうち364日働きたい人は働けばいいし、労働基準法に則って1日8時間までしか働きたくないという人はそうすれば良いと思っています。労働サービスの買い手である会社の方も、自社の希望に沿って売り手を選べば良いでしょう。いわゆる「契約自由の原則」、「肝胆相照らす」という感じで。

その結果、買い手も売り手もそれぞれの思惑通りにならず失敗したら、どんどん倒産あるいは失業しても良いと考えています。なぜならその方がミクロ経済学的に「効率が良い」からです。なおここでいう「効率が良い」とは、「社会全体に富がちょうど良いところで配分される」ということを意味します。

エラい方々にやってほしいこと

で、エラい方々にご登場を願いたいのはここからです。事前にいろいろと「あれはコレ、これはアレ」と決めてしまうのではなく、事後的なことに力点を置くことを強く要望します。「失敗したときのセーフティネットをどうするか?」です。

特に難しいことを考えることをする必要もなく、「失敗しても食うに困らない」とか「敗者復活戦」があると思えば、思い切った改革ができるのではありませんか?また「あかんもんはあかん」とバッサリ切って、「芽は出そうだけど育てれば何とかなりそうなビジネスやヒト」にリソースを割いた方が、気分も明るくなるような気もしますが。

スウェーデン(新しいタブで開く)あたりでは「高福祉・高負担・高競争の超積極的労働政策」と呼ばれていると思います。

やっぱりひとりひとりの心がけ

貧困対策は官ができる数少ない仕事のうちの一つであり、どこまで再教育や職業再訓練に「実弾」を発射できるかにかかっていると考えます。ただ、残念ながら政府も「笛は吹けども踊らず」ということで困っているようです。P.120で使われている文章をそのまま引用しましょう。

政と官がよかれと思っても使われない補助金はある。事業再編で離職した人の再就職を後押しする「労働移動支援助成金」。2014年度に300億円と前年度の150%に膨らませたが、現在の執行率は7%。手続きが煩雑で、誰を支援するのかも不明確。失業に悩む人もそっぽを向く。

こんな状況なので、働き方改革は草の根レベルでもっともっと議論を深めて、自然な形で落としどころを決めた方が良さそうですね。