経済教育をするための絵本です。子ども用の本ですが自分で商売をされたことがない方であれば、十分実用に耐えると感じました。個人的には、「自分が子どものとき親に読み聞かせてもらえたらなぁ」と感じるぐらいよく出来た内容だと思います。
欲を言えばせっかくの「新装版」なので、レモネード屋さんを始めるための初期投資で他人資本(負債)を使うときに、銀行の信用創造機能の説明ができればなお良しです。
バーチャル商売ができなかった時代
ところで「旧版」が出版されたのは、1982年です。今でも経済や商売の原理原則を貫いているため内容的には、この先何百年も通用するでしょう。
ただ21世紀になってから違うのは、この本に書かれていることが、バーチャルで体験できつつあることです。出版された当時であれば、この本に書かれていることを試すためには、本当にレモネード屋さんを始めるか、せいぜい紙の上で「子ども銀行券」を使って体験授業をするのが関の山だったでしょう。
そうなると経済や商売の原理原則を学習するというよりは、店舗の物件を探したり、紙のお札やエクセルによる計算表を準備することに意識が集中しがちになります。
バーチャル商売ができる技術の登場
ですが、出版された年から36年も経過して、Web上の技術を見回すと、「レモンをお金にかえる法」に集中できる環境が限りなく整っている用に思います。個人的には以下の3つのサービスを使えば良いのではないかと考えています。
WordPress + WooCommerce(ECサイト)
どちらもOSS(オープンソースソフトウェアとその拡張機能)なのでとりあえず無料で使うことはできます(機会費用はかかりますが)。
ですがDockerHubにある程度作成したECサイトを突っ込んでおけば、誰にでも使いやすく配布することができます(ローカル開発環境などにDockerをインストールする必要はありますが)。保守を考えなくても良いので機会費用は比較的安く済むと思います。
PayPal(決済サービス)
PayPalはSandoBoxというPayPalのシステム内で通用する、架空のお金(電子マネー)を使うことができます。またPayPalには「口座」という概念があり、銀行口座とよく似た性質があります。
PayPalは預金金融機関ではないため、利息を付すことはできません。しかし超低金利で利子返済をほとんど考えなくても良い現状を考えれば、PayPal口座を銀行の当座口座に見立てて、自分の好きな額を信用創造しても差し支えがないのではないかと考えています。
freee(クラウド会計サービス)
モノやサービスを販売して、お金を回収してもその一連の流れを複式簿記でその様子を常に記録しなければなりません。その帳尻をみてイグジットして事業をたたむか、再投資をして事業を継続するか判断しなければなりません。
本番環境ではPayPalの決済はfreeeに反映されます。ですがPayPalのテスト環境がfreeeに反映されるかどうか分かりません。そもそもfreeeにテスト環境があるのかどうか確かめていません(多分できないと思いますが。教育用に作ってくんないかなぁ)。
Web上で「商売の作法」を学習する
自分で商売をしたことがない人に向かって、いきなり「起業せよ」と言っても難しいと思います。とりあえず自分で商品の開発・仕入れ、営業・販売・管理の一連の学習を行ってみて、「商売の作法」から始めてみることは経済教育として面白い取り組みなのではないでしょうか。