突然ですが、もしWordPress(Storefront) + WooCommerceで越境ECを始めたいと思っている方から、「決済システムはStripeとPayPalのどちらを選べば良いでしょうか?」と質問されたら、皆さんはどうお答えしますか?自分なら「どっちも使いましょう!」とお答えします。
お金の使い道を確認
ECサイトの運営者とお客様の間で販売契約が成立し、決済することによって債権債務の関係が解消した場合、自分の手元にお金が入ってきます。なのでまずECサイトの運営者の方が稼いだお金の使用用途を確認します。
Stripeを勧める場合
自分:「越境ECで稼いだお金をどのように使いたいとお考えですか?」 運営者Aさん:「日々の生活費や、毎日の売上を上げるために必要な仕入や経費に使います」 自分:「じゃあStripeを使いましょう」
PayPalを勧める場合
自分:「越境ECで稼いだお金をどのように使いたいとお考えですか?」 運営者Bさん:「そーですね、まだはっきりと考えてないです」 自分:「じゃあPayPalを使いましょう」
「短期のお金」はStripeで「長期のお金」はPayPalで
そもそも「お金」というものには、3つの機能があります。
- 価値の交換
- 価値の尺度
- 価値の保蔵
先の会話においてAさんとBさんでおすすめする決済サービスを使い分けたのは、「価値の保蔵」についてどのように考えているかを確認するためです。
売上金についてすぐに使いたいということであればStripeを、とりあえず預かってもらってほしいということであれば、PayPalをおすすめします。
別の言い方をすれば「短期のお金」が必要であればStripeを、「長期のお金」が必要であればPayPalをおすすめするとも言えます。
お金の期間でサービスを使い分ける
もちろんPayPalとStripeのどちらかに肩入れをして、使い分けをしている訳ではありません。それなりの客観的な理由があります。
Stripeの場合
まずはStripeの方からご説明をしましょう。
このブログでも書きましたが、Stripeはローカル開発環境で決済を試すという時間がとにかく早いです。2時間と書いていますが、決済を試すだけであれば30分もかかりません。
それに対し、自分は何の予備知識も状態から、PayPalを使ってローカル開発環境で決済を試すまでに4日もかかりました。
起業して間もない会社や現金の回転を早くしないといけない会社(小売業など)で、ECサイト構築に日にちがかかってしまうことは致命的です。そういう観点からするとPayPalは敬遠されるかもしれません。
PayPalの場合
ではStripeとPayPalの方が劣っているのかと言えば、もちろんそんなことはありません。そもそもPayPalとStripeでは同じ決済サービスと言っても、法律的な立ち位置が異なります。
- PayPal → 資金移動業者(金融庁の管轄)
- Stripe → 収納代行業者(経済産業省の管轄)
現在、日本で業務としてお金を預かることができるのは銀行法に基づく銀行業と資金決済法に基づく資金移動業だけです。
PayPa口座に入金されている電子マネー(電子的決済手段)は他人に送金したり、換金することができます。したがってPayPalは送金(為替)業務も可能です(ただし1回の送金につき100万円まで)。
またPayPal口座では越境ECで得た米国ドルを、任意のタイミングで日本円に通貨交換(両替)することも可能です。もし長期的に通貨価値が円安ドル高の傾向が進むことを期待する場合は、PayPal口座の米国ドルで「価値の保蔵」をすることがおトクになります(ただしPayPalは銀行法の預金取扱金融機関ではないため口座に「利息」は付されません)。
一方、Stripeは収納代行業者として金融規制の対象外とされています。
「技術 + お金の使い道」の観点から見た場合は?
ここまで「お金の使い道」の観点からのみ、StripeとPayPalの特徴を述べてまいりました。今回のお話は決済サービスを導入するにあたって、WordPressやWooCommerceを使ったり、販売先は海外であったりと、自分がお話しやすいように仮定の条件を並べています。
「WordPressではなく、別のWebアプリケーションフレームワークを使ったらどうなるの?」など技術的な観点からみれば、両者についてまた異なった特徴や使い分けが見えるかもしれません。したがってどちらを使うべきか問われた場合、冒頭のとおり「どっちも使いましょう!」ということになります。
いつか「技術 + お金の使い道」の観点から見た場合、StripeとPayPalはどのような差や特徴があるのか、聞けることを楽しみにしています。