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WordPressの「投げ銭プラグイン」を作ってみよう(その1)~ 「投げ銭」考察

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WordPress界隈の人とお話をしていると、「自分が書いたブログ記事や創作したイラスト・デザインについて投げ銭してもらえると良いよね〜」という話をよく聞きます。自分もその考え方には大賛成です。ぜひともエコテキブログの記事にもたくさんの方から「投げ銭」をしてほしいと考えています。

「投げ銭」の定義

ただ「投げ銭」とは大変あいまいな言い方なので、「投げ銭」を「資金移動」という言葉に言い換えることにします。以下の主に3つの行為が「資金移動」に該当すると推測されます。

  • 1. 債権債務の解消を目的とした資金移動
  • 2. 個人間送金による資金移動
  • 3. 寄付による資金移動

それぞれの資金移動について具体的にどういことか、金融規制や税制の観点から考察してみましょう。

1.債権債務の解消を目的とした資金移動

債権債務の解消を目的とした資金移動は資金移動業者(PayPalなど)・収納代行業者(Stripeなど)・決済代行業者(NTTのダイヤルQ2など)が行うことができ、その規制は金融庁や経済産業省が管轄します。

資金移動について

債権債務の解消を目的とした資金移動とはつまり商取引のことです。商取引とは販売契約をした購入者が販売者に対して金銭を給付する代わりに、販売者が何らかの財・サービスを反対給付をする行為を指します。

税金について

商取引によって得た収益は事業所得に該当し、(収益 – 経費)によって発生する課税所得額によって所得税の納付義務が発生します。

2.個人間送金による資金移動

個人間送金とは、その名の通りある一方から他方へお金を送る行為のことを指し、為替とも言い換えることができます。為替とは隔地者間で実際の紙幣や貨幣の移動を伴わない、資金移動のことを指します。また為替は商取引とは異なり、必ずしも債権債務の解消を目的としません。

資金移動について

為替による資金移動の重要なポイントは、日本の金融規制において銀行法に基づく銀行業者と資金決済法に基づく資金移動業者しか行うことができない点です。

銀行業者や資金移動業者は為替業務を行うに伴い、「顧客からお金を預かる業務」をしなければなりません。この「顧客からお金を預かる業務」についても、日本では銀行業者と資金移動業者しかできません。

ここまで読んでくださった中の人で、「ではストリートミュージシャンに渡すチップや、大人が子どもに渡すお年玉はどうなるんだ?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。ですがストリートミュージシャンやお年玉による「投げ銭」は、以下の理由で金融規制の観点から為替に該当しないと考えられます。

  • 直接現金の受け渡しを行なっている
  • 他人のお金を預かる行為を業務として行なっていない

税金について

為替・チップ・お年玉などお金の渡し方に関わらず、その金額や実態に即して贈与税が発生する場合があります。税制の詳細については国税庁が公開しているタックスアンサーなどで調べてみましょう。

3. 寄付による資金移動

今回の記事で紹介する寄付とは宗教法人への寄付を具体例として説明します。

資金移動について

寄付による資金移動も、金融規制として「2.個人間送金による資金移動」に準じます。隔地者間で寄付(金銭によるお布施・喜捨など)をする行為は為替に該当するので、金融規制の対象です。直接現金を渡す行為は、金融規制の対象外となります。

税金について

税金については、国税庁が発行する「宗教法人の税務」に準じます。為替や現金の受け渡しが収益事業に該当する場合、宗教法人に収益があるとみなされます。宗教法人は課税所得について法人税の納付をしなければなりません。

中世イタリアの「パトロン」と現代日本の「投げ銭」

とまあここまで全て「投げ銭」について、金融規制と税制など法律的な側面を考慮しつつ、私論を述べました。いずれにしても「投げ銭」とは広い意味の言葉です。現代日本の法律論だけで語り切ることはできないでしょう。

「投げ銭」に類似する行為として、文化・芸術の側面から「パトロン」はという言葉があります。中世イタリア・フィレンツェ共和国のメディチ家は銀行業で得た巨万の富を使って、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロなどの芸術家に惜しげもなく支援しました。その結果、メディチ家が彼らのパトロンになったおかげでルネサンス(古代ギリシアの文化復興運動)が花開いたことはあまりにも有名な話です。

中世イタリアの「パトロン」と現代日本の「投げ銭」はどういう関係があるのか、金融史・宗教史・美術史的に非常に興味深いテーマだと思います。もしメディチ家のようなパトロンが21世紀にWeb上で出現したら、クリエイターの活動や生活はどのように変わるのか。またメディチ家のような大富豪でなくても、インターネット上で分散化された個人が固まってメディチ家のようになることはできないか、など想像は尽きません。

この記事をきっかけに単に日本の法律論だけでなく、経済史や文化史まで含めて「投げ銭」に関する議論が深まれば幸いです。

その2からは「1. 債権債務の解消を目的とした資金移動」を目的とした「投げ銭プラグイン」の開発方法を解説します。