信吾どん(西郷信吾 = 錦戸亮さん)も格之助どん(大山格之助 = 北村有起哉さん)も最後の方で叫んでましたね、「どうしてこうなるんだ!」と。自分自身も番組を見ながら「どうしてこんな悲劇になるんだ?」と思っていました。その原因はおそらく「らっきょう、らっきょう」と藩士から侮られていた島津久光さんの政治信念でしょう。
やはり「地ごろな弟」の島津久光
島津久光さん(青木崇高さん)は、前回のタイトルで「地ごろな弟」と番組そのものから名指しで「田舎者」と呼ばわりました。これまでのお話を見る限り、久光さんは「何かを成し遂げよう」という政治信念に乏しいと言わざるを得ません。天子様から「不逞浪士鎮圧の詔(みことのり)」がくだされると、はち切れんばかりに喜んでいたシーンが象徴的です。
ところで久光さんが一千の兵を連れてわざわざ薩摩から上京したのは、幕府の政治に異議を申し立てるためではありませんでしたっけね?いつの間にか兄の斉彬公の意志ではなく、天子様や公家衆の意向になびいてますやんw
そりゃあ、吉之助どん(鈴木亮平さん)や新八どん(村田新八 = 高橋光臣さん)も下関待機命令を破りますし、新七(有馬新七 = 増田修一朗さん)どんも京都でひと暴れしたくなりますわな。
「道化師」役が光る青木崇高さんの演技
と、ここまで久光さんのことを散々とこき下ろしてしまいました。ですがお芝居の話をすれば青木崇高さんの活躍が、ひときわ光っていると思います。。
青木さんとNHKといえば「ちりとてちん」の強面兄さん(徒然亭草々)や「ちかえもん」のふざけた飴売り(万吉)が印象に残ります(あと「平清盛」で弁慶役もされてましたね)。「西郷どん」における青木さんの久光役には、NHKで培った役どころが全て凝縮されているように映ります。
「西郷どん」に登場する久光は決して大悪人ではないんですよね。久光も江戸時代の中頃に生まれていれば、鎌倉時代以来の名家で育った庶流の子として、歴史の表舞台に立つこともなく平凡な人生を過ごしたように想像します。
たまたま、時代の転換期に「偉大な兄」の次に生まれたという「運」が回ってきてしまい、一世一代の壮大な空回りをしているように映ります。ひょっとすると、青木さんは島津久光役を通じて明治維新最大の「道化師」を演じようとしているかもしれません。ちかえもんの万吉も「道化師」みたいなもんでしたし。
次回の吉之助は鳥かご入り?
小松帯刀(町田啓太さん)ら側近による助命嘆願により、なんとか罪一等減じられて「島送り」になった吉之助。NHKの歴史考証がリアルすぎるのか、次は奄美大島のときと違って、鳥かごみたいな吹きさらしの牢に入れられるようです。
誰がこんなセットを考えたのか、一視聴者として大道具さんや時代考証の先生方の努力に頭が下がります。引き続き、第24回の「地の果てにて」も期待です。