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【読書感想】無私の日本人

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18世紀、仙台藩に実在した「穀田屋十三郎(こくだやじゅうざぶろう)」の章だけ読見ました。「穀田屋十三郎」は2016年に映画として公開された「殿、利息でござる!の原作小説です。

「穀田屋十三郎(殿、利息でござる!)」は、これといった目立った産業もない宿場町が仙台藩に1,000両(現在の貨幣価値にして約3億円程度)もの大金を貸し付けて、町全体で貸金業を始めるという実話の物語です。藩に1,000両を貸し付けると年利10%で100両もの収入を町にもたらすことができたそうです。物語についても詳しく知りたい方は、映画を見るかWikipedia(新しいタブで開く)で調べましょう。

仙台藩も現在の日本も同じ

穀田屋十三郎とその同志である菅原屋篤平治(すがわらやとくへいじ)たちは、一介の商家です。江戸時代の身分制度で言えば最下層の身分であったにも関わらず、「金もいらぬ。名もいらぬ。死も恐れぬ」という正に篤志家の鑑(かがみ)のような人たち。その彼らが最も恐れたことは「社会の貧困」でだったのでしょう。

彼らは決して自分たちだけが貧しさ飢えで苦しむ・辱めを受けるのが怖かったのではありません。コミュニティ全体が貧困に陥ったときに見る地獄の光景(窃盗・殺人・詐欺・強姦・汚職・頽廃ムード・暴力による支配など)が最も恐ろしかったのだと想像します。その一心が彼らをつき動かしていたのではないでしょうか。

貧困による負の連鎖が始まると子々孫々まで受け継がれてしまいます。やがて町は荒廃し、若者は故郷を見捨て、地域は消滅します。あれ?これってどこかで見たような…。というか現代の日本が抱えている問題と同じような感じでですね。

夕張市でもうやってますよね

【読書感想】縮小ニッポンの衝撃 (講談社現代新書)

自分は現代の日本でも穀田屋や菅原屋のような行動を取れる人物がいると信じています。もっとも「穀田屋十三郎」が住んでいた宿場町を地で行くような地域が現在の日本にもあります。北海道・夕張市です。

確か夕張市役所・総務課長の手取り収入は約17万円、市長は約15万円。さすがに市長はその収入だけ食べて行くことはできず、夫婦共働きで所帯を回しているそうです。また夕張市議会の議員歳費にいたっては10万円程度で、自営業をしながら議会運営に携わっているとのこと。なぜそんな状態になっているかは、縮小ニッポンの衝撃 (講談社現代新書)が参考になります。

身近に感じる必要がある貧困

現代の日本で当てはめれば、公務員だけが「穀田屋十三郎」や夕張市のようなことをやれば良いというわけではないと思います。むしろ名もなき市井の人が、公務員を突き動かすぐらいの行動をしなければならないと痛切します。ただそれには貧困をもっと身近に感じないとできないでしょう。