首相官邸のWebサイトが2019年2月13日(水)に追加した資料によりますと、政府の未来投資会議が資金決済法にもとづく資金移動業者の送金上限額(100万円)を引き上げることについて検討されていることが明らかになりました。
「100万円の壁」突破は当たり前
現行の資金決済法では資金移動業者による1回の送金につき100万円までと定められています。ではなぜ資金移動業者の送金上限額は100万円までとされているのでしょうか?
- 「どこの馬の骨かもわからない業者に大金を預けるのはいかがなものか」
- 「新規参入業者を嫌った銀行のロビー活動に邪魔された」
2010年に資金決済法が公布されたときに「100万円以下」となった理由は諸説ありますが、これといった根拠はありません。資金移動業者は預かった資金について100%以上の供託義務を課せられて忠実に実行している以上、「100万円以下に限る」という決まりは意味をなしません。
しかも資金移動業者には金融庁から定期的に金融検査を受けています。したがって「100万円の壁」を取り払うことは、個人的には規制緩和も何も「当たり前」という印象です。
「100万円の壁」を突破したらどうなるか?
さて、グチばかりをいっても仕方がありません。資金決済法から「100万円の壁」を取り払った場合、どんなことが起こりうるでしょうか。
一言で言えば高額取引や高額送金のキャッシュレス化が挙げられます。考えれる具体例を未来投資会議の資料から引用しますが、他にもまだまだあるかもしれません。
C to Cサービスの送金ニーズ
- 中古車販売
- 中古ブランド品の販売
- 不動産家賃の支払
- 留学費用の送金
B to Cサービスの送金ニーズ
- クラウドソーシングの報酬支払い
- クラウドファンディングの資金
- 中小メーカーの海外製造費の支払
ひんぱんに聞かれるようになったキャッシュレス決済ですが、数百円からせいぜい数万円程度の金額を決済する程度の議論に止まっていると思います。
資金決済法から「100万円の壁」が取り払われることによって、上記で挙げたような数十万円から引いては数千万円単位の高額取引も盛んになると推測されます。
PayPalで高額の資金移動が大丈夫な2つの理由
ここからはPayPalびいきの発言です。PayPalが嫌いな方は読み飛ばしてください。「PayPalに4桁万円以上の大金を預けて、テロや犯罪組織の資金源に使われて不正の温床にならないか?」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
「不正の温床として使われることは絶対にない」とは言いませんが、おそらく以下の2つの理由により、闇資金のために使われる可能性は限りなく低いと考えられます。
- 1. 金融庁による金融検査を定期的に受けているから
- 2. AIや機械学習の技術でテロや犯罪組織など不正な資金の送金を止めているから
金融検査については上述したとおりです。AIや機械学習の技術については、2018年11月30日に行われた「PayPalメディアセミナー」で、北米に駐在しているPayPal本社のセキュリティ担当副社長がそうおっしゃったことによります。