先日、JP_Stripes(Stripeのコミュニティ)に参加したとき、Stripeさんの「なかの人」とこんな感じの会話をした記憶があります。
自分:「Stripeのアカウントを使って送金することは可能ですか?」 なかの人:「技術的には送金を行うことは可能ですが、うちではやっていません」
PayPalさんは金融庁に登録されている「資金移動業者」
出資法とか資金決済法などで規制されていることについては、Stripeでもどこでも等しくやっちゃだめ。#JP_Stripes
— Hiroshi Fukui@DMM英会話は休会中 (@echizenya_yota) August 23, 2017
ところでPayPalさんのサイトのトップ画面でフッター部分を確認すると、日本国金融庁に登録されている「資金移動業者」であることが明記されています。
資金移動業者とは?
資金移動業者とは何でしょうか?一般社団法人日本資金決済業協会が公表しているPDFファイルで、資金移動業者についてこのように説明されています。
銀行以外の事業者が送金業務を行うには、資金決済に関する法律(以下「資金決済法」という。)に基づき、主たる営業所等を管轄する財務(支)局長に資金移動業者の登録を行う必要があります。資金移動業者は一回につき100万円以下の送金を行うことができます。
要するに日本において銀行以外の事業者は、いわゆる「お上のお墨付き」がないと送金業務を行うことはできないんですね。
PayPalさんのペイアウト(送金)を教えてください!
冒頭のStripeさんとPayPalさんの違いを挙げろと言われれば、技術的なことも含めていろいろとあると思います。ただし個人的に今もっとも興味があることは、「法律的に送金業務ができるかどうか?」というところです。
そこで、さくらクラブの「いろいろ初心者もくもく勉強会 with PayPal の日 in JUSO Coworking」でPayPalさんの「なかの人」が来られたので、ペイアウトについていくつか質問をしてきました。
質問その1
PayPalさんはPayPalアカウント同士であればペイアウト(送金)ができるとになっています。ペイアウトができるのは日本政府の資金決済法に基づき、金融庁に対して、PayPalさんが「資金移動業者」としての登録を行なっているからでしょうか?
その通りです。PayPal口座間で一回につき100万円以下の送金を行うことができます。
質問その2
ペイアウトサービスの想定顧客、送金手数料、手数料の負担者を教えてください。
想定顧客は法人です。送金手数料は送金額の2%で送金者(法人)が負担します。具体例として、事業者がアフィリエイト料を払う場合などが挙げられます。
質問その2
ペイアウトができるパターンを教えてください。
– 国内で同じ通貨の送金(例:円→円) → OK
– 国内で異なる通貨の送金(例:円→ドル) → OK(送り手が通貨を変えて為替手数料を負担)
– 海外への送金(例:日本→米国で通貨は円で統一)→OK
– 海外への送金(例:日本→米国で通貨は円からドルに変更)→ OK(送り手が通貨を変えて為替手数料を負担)
質問その4
PayPalさんが「資金移動業者」としての登録を行なっているので、アプリケーション開発事業者は金融庁に対して登録を行わずとも、ペイアウトに関するアプリケーションを開発することは可能でしょうか?
可能です。ただしPayPalに申請をして、内部で審査が必要となります。
質問その5
法人がペイアウトサービスを利用するための審査の基準を教えてください。
法人登記簿、売上の実績、取引先やビジネスのリスクなどPayPal独自の基準に基づいて審査を行います。
質問その6
ペイアウトのサービスとVenmoのサービスの違いを教えてください。
ペイアウトは企業のPayPal口座から不特定多数のPayPal口座に送金することを想定しています。一方Venmoは個人間送金サービスです。利用にはアメリカの銀行口座と携帯電話番号が必要なので、実質アメリカ内だけでのサービスとなっています。
個人的な感想
PayPalさんは決済代行業者という立ち位置に見えますが、単なる収納代行業者ではなく、資金決済法に基づく資金移動業者として、銀行に似た側面もある大変興味を覚えました。
越境ECで円の商品をアメリカで販売して、そのままアメリカの銀行でドルのまま価値を保蔵しておくなどのメリットがあります。もちろん越境ECでブツを売ってすぐ円に換金したい方も多数いらっしゃると思います。
ただ将来に向かって「円安ドル高の時代が来る」と感じて、ドルで資産形成を保有したいと感じられている方も多数いらっしゃいます。そんな方にとってはPayPalという存在は非常に大きいものだと感じました。
【参考サイト】