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「銀行法精義」で読み解く資金移動業者の送金業務について〜個人間送金と企業・個人間送金の課題

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以前から「為替と送金って一緒やん」と思ってましたが、銀行法精義(新しいタブで開く)を読んで両者は違う概念であることが分かりました。為替とは隔地者間の資金移動のことを指しますが、銀行法精義(P137)によると、さらに以下の3つに詳しく分けることができます。

  • 振込
  • 送金
  • 代金取り立て

つまり為替とは送金と比べて包括的な概念であり、送金は為替の下位概念に位置していることが分かります。

振込・送金・代金取り立ての概要

振込・送金・代金取り立ての概要は以下の通りです。それぞれ銀行法精義のP137からP142を参考にしています。

振込とは

振込は受取人の預金口座に一定金額を入金する為替行為のこと。

送金とは

送金は銀行を介して行う資金の送付のこと。

代金取り立てとは

代金取り立てとは、手形や小切手その他の証券類による金銭債権に関して、当該金銭債権の支払いにん請求して債務を履行させること。

先日、為替取引について人前で説明した(新しいタブで開く)こともありますので、以降は振込と送金に絞ってその違いについて考えてみます。

振込と送金の違い

銀行振込と銀行を介した送金について字面だけを見ていると、どちらも同じように見えます。ですが両者の行為について簡略図で表すとその違いが分かります。

振込による資金移動

支払依頼人 → (預金口座) → 仕向銀行 → (資金移動) → 被仕向銀行 → (預金口座) → 受取人

送金による資金移動

支払依頼人 →  仕向銀行 → (資金移動) → 被仕向銀行 → 受取人

両者の違いのポイントは、資金移動に際して(支払依頼人と受取人の)預金口座が活用されているかどうかにあります。振込・送金ともに銀行が介在しているものの、送金では預金口座は使われていません。

送金の特徴

そもそも送金とは受取人が取引銀行を有しない場合や、依頼人が受取人の取引銀行を知らない場合において利用される資金移動の手段です。特徴として銀行法精義のP140では、このように説明されています。

支払人が想定している受取人と、現実の受取人とが同一の人物かどうか確認を要することにある。この確認手続は思いのほか難事業である。送金では、被仕向銀行に間違いなく正当な受取人に送金額の支払いをなさしめるため、受取人資格を証明する資料が作成される。

資金移動業の為替業務について

以上はすべて銀行業の為替業務についてのお話でした。では、個人間送金や企業・個人間送金で注目を集める資金移動業者(PayPalやLINE Payなど)に当てはめ、為替について考えるとどうなるでしょうか?

資金移動業者ができる為替業務は送金だけ

内閣総理大臣の登録を受けた者は、銀行法第4条第1項および第47条第1項の規定にかかわらず、資金移動業を営むことができる(資金決済法第37条)

今回の記事に置き直して資金決済法の条文を平たく解釈すると、「本来、為替業務は銀行だけが行えるものなんだけど、資金移動業者もやっていいよ」と言うことになります。ただし資金移動業者は、利用者に対して預金口座を保有させることはできません。おのずと資金移動業者ができる為替は送金だけになります。

資金移動業者の革新性と今後の課題について

で、最後に私見です。今のご時世、PayPalやLINE Payが資金移動業者として送金業務を行っています。なので「革新性」といってもいまいちピンと来ないかもしれませんが、資金移動業者の「革新性」とは、「難事業」といっていた銀行そのものを外して、送金業務を完結させてしまったことにあると思います。

ただ一方で課題もあります。資金移動業者は銀行をもってしても「難事業」な送金業務を行うことにメリットはあるのか、つまり採算が合うのかどうかという点です。

送金は決済と違って付加価値を生むことが難しい経済活動です(決済では販売者が商品原価に粗利を乗せられる。決済サービス事業者は販売者が得た粗利から決済手数料を抜くことができる)。今後、資金移動業者は付加価値を産みにくい送金と、民間事業者としての採算性をどうやって合わせるかについて注目したいところです。