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【読書感想】預金バカ 賢い人は銀行預金をやめている (講談社+α新書)

yokin_baka

以前、大手証券会社の投資セミナーに行ったことがあリます。そのときの講師や会場の雰囲気と、本書の世界観が非常に似ていると感じました。

投資信託会社の社長さんが書かれているため、ポジショントークっぽい話が半分でそうでない話が半分という印象です。実際に投資信託を買うかどうかは、読まれた方のご判断にお任せします。

煽りっぽくないところがほとんど

ですが、ポジショントークではない部分についてはしっかりと目を通しておくことをおすすめします。「バカ」と煽りのようなタイトルが使われていますが、普通預金の役割についてもちゃんと説明されています。

本書の良いところは、学校ではほとんど教えてくれない政府の財政事情・経済の仕組み・間接金融の役割など(ちょっと古いけど)数字を交えて丁寧に教えてくれているところです。

銀行の様子が分かる数字集

以下は個人的な備忘録もかねて、この記事を読んでいただいた方が、全員覚えておいた方が良いと思う「銀行の数字」を列挙しておきます。

国債の保有比率は39.1%(P.30)

2013年9月末時点で、国債及び国庫短期証券の発行残高が約980兆円です(いわゆる「国の借金」)。うち銀行の保有比率が39.1%で金額にして約383兆円になります。要するに融資に回るはずの383兆円が財政赤字の穴埋めに使われていることになります。

預貸率は67.9%(P.34)

預貸率とは預金に対する貸し出し金額の割合のことを表します。つまり67.9%という数字は銀行預金のうち約3分の1が融資のために使われていないということを示します。3分の1を具体的な数字(預貸ギャップ)で表すと、約217兆円になります。著者曰く、

残ったお金は、いわゆる「金余り」の状態であり、働かずに眠っているのも同然です。

だそうです。ちなみに高度経済成長期における預貸率はほぼ100%だったそうです。

定期預金の利率年0.025%(P.37)

2014年6月の時点でメガバンクの1年物定期預金の利率は年0.025%。100万円を定期預金としてメガバンクに預けても年250円にしかなりません。

ちなみに預金の利子は利子所得に関する源泉分離課税(20%)がかかりますので、預金者の手元には残るのは200円です。メインバンク以外の銀行に送金しただけで赤字が出るほどの「超低空飛行」並みの預金金利です。

もう「インフレ税」が始まっているのでは…

財政赤字を埋めるために増税しようとすると、議会の運営や政権の維持が困難になることは目に見えています。そのまま国民の資産を銀行預金に押し込んでおいて、目に見えにくい「インフレ税」で借金をチャラにすることは十分に考えられるでしょう。

NHKのニュースを見ると日本銀行が実質賃金が上がらないことを嘆いているようかのようです。ですが物価全般としてはしっかり上がっているので、財政・金融政策サイドとしてはどこかほくそ笑んでいるような気がしてなりません。

そういえば中学や高校の日本史の授業では、1946年の預金封鎖(新しいタブで開く)の背景と経緯についてちゃんと教えてくれなかったなぁw