この本を読んでいると、どの国でも金融当局とその関係者は銀行に対して不信と不満を抱いているんですね。憤っているのは、日本の金融庁だけかと思っていましたが。
各国の金融当局も古来から銀行だけが有していた信用創造機能が全く生かされていないことに、苛立ちどころかキレる寸前まできているようです。
「ベンチャー御一行様」大歓迎
ただしその裏返しとして、Facebook・Google・Twitter・Amazon・Apple・PayPalなどここ20年ぐらいで急激な進化をとげ、利用者のニーズに答え続けた新興のWeb企業には、金融当局から相当な期待が寄せられています。
もちろんSNS、検索エンジン、クラウドサービス、スマホ、決済サービスの「巨人」だけでなく、「経済の血液」とも言うべき金融のサービスをより身近にするようなベンチャー企業が進出することについても、当局は大歓迎しているようです。
なのでどうやったら小規模事業者でも銀行業やその関連サービスに食い込めるか考えてみました。
B2Bの決済ビジネスに食い込む
小規模事業者は、B2CのビジネスよりもB2Bのビジネスに力点を置くべきではないでしょうか。「B2Cの雄」とも言うべきアマゾンでは、個人客は欲しいものがあれば、数回のクリックをすれば決済から配送まで全て完了します。しかもどの個人客がやってもその作業手順は一律化されています。
銀行の「壊れたシステム」
ところがB2Bの場合、アマゾンのように簡単かつ標準化された作業だけでは商売が完結しません。顧客によって供給者側の請求のタイミングがまちまちであったり、販売先の国によっては税関手続や関税率・消費税率が異なるため、必ずしも決済を含めた商取引の完結があいまいなことが現状のようです。
このあいまいさの根本的な原因を追っていくと、銀行のレガシーなシステムに行きつくようです。本書ではP151で「壊れたシステム」として揶揄されています。
小規模事業者の「商機」とは?
銀行が持つ旧式のレガシーシステムの具体的にどこを変えれば良いのか、この本には書かれてはいません。ですが請求業務のかなりの部分がいまだに人力と紙ベースで行われ、かなりの手数料負担がかかっていることは確かです。
この「人力」・「紙」・「手数料」の部分をデジタルデータに置き換えることは、小規模事業者の得意とするところだと思います。ここら辺に「商機」があるのではないかと考えます。
銀行とのコラボレーションが必要
先の段落で触れたことと関連することですが、販売事業者にとって一貫した決済システムを構築をするためには、銀行を取り込むことが欠かせません。
小規模事業者にとっては信用創造ができる(お金をつくることができる)金融機関の存在は大きく、どこかの銀行が整理・縮小されても銀行業に対するニーズそのものは決してなくならないでしょう。
信用創造によって小規模事業者の銀行口座に預金が入金されることはビジネスの起点です。そのお金の流れと情報をシームレスにして、可視化できるサービスには多くのニーズがあるのではないかと推測されます。
事業会社や銀行業の内容に興味をもつ
以上のことを踏まえると、決済や送金分野のFintechについては、情報だけでなく、銀行を起点・終点として実際のお金の流れをリアルタイムに把握できるかが課題となると思います。もちろん紙のデータを用いることで、情報とお金の流れについてタイムラグを生じさせることなど論外です。
その課題を解決して小規模事業者がFintechの分野で「商機」を掴もうとするならば、その決済サービスが持つ技術的な要素だけに特化すれば良いというものではないと考えます。
小規模事業者は顧客ターゲットとする事業会社の商品やサービス、すでに存在している銀行業務の内容とその問題点、決済を取り巻く金融規制など、商売を完結させお金が円滑に循環していくことについて、幅広い興味を持つ必要があるのではないでしょうか。