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【読書感想】スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む: 日本の大学生は何を感じたのか

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スウェーデンと日本の教育を比較する限り、自分はスウェーデンでは小学生に何を教育しているのかよく分かりません。スウェーデンで教育を受けたわけではないので。

日本の「コンピューター教育」

ざっと本を読んでみたところ、スウェーデンの教育は一般的には「ひとづくり」の教育といえるかもしれません。ですが「ひとづくり」ではあまりに漠然としていてるので、あえて「分からない」ということにしました。

ただし、両者で比較する限り日本では小学生に何を教育しているのかはっきり分かります。人間が記憶できる程度の暗記力と簡単な計算の反復です。残念ながらいずれも人間がGoogle検索とパソコンの計算力に劣後する能力です。

日本の小学校教育と限界収穫逓増の法則

こういうと「スウェーデン万歳日本あかん」みたいな感じに取られるかもしれませんが、両者の良し悪しを論じることはしません。それぞれにメリット・デメリットがあるからです。

例えば、モノが満たされないために生活が貧しい時代においては、とりあえずたくさんのモノを貧しい人たちに供給しなければなりません。そのとき最も効率が良い方法は少品種大量生産です。

大量の労働力はおのおのひたすら一つの作業に特化しなければなりません。労働者が「あーだこーだ」と口ばかり動かして手を止めることなど論外です。

すると限界収穫逓増の法則が働き、大量のモノを指数関数的に供給できるようになります。限界収穫逓増の法則はアダム・スミスがピン工場を視察したときの経験に基づいて、それらしきことが「国富論(新しいタブで開く)」で描写されています。

ただ、その指数関数的なモノの供給も人口が頭打ちになれば、労働力の量ではなく質が問われます。

「決めてもらわなくても行動できる」ひとの教育

ところで先日、サイボウズ株式会社の青野慶久社長と経済産業省の消費・流通政策課 課長の林揚哲さん(「プレミアムフライデー」のなかの人)の対談記事を読ませていただきました。

すわ、「サイボウズさんが出した『働き方改革』に対する意見広告と、『プレミアムフライデー』のガチンコバトルがはじまるのか!?」と思いきやそうではありませんでした。働き方改革をすることによって、おのおのが働きやすいように働いてくださいという至極真っ当な結論を得ています。

ただ、残念だったのが、林さんのセリフです。

企画の途中で「決まっていないと休みづらい」「休み方がわからない」という声があり、今回は消費活動と結びつけて曜日を提案しました。本当は自由に休めばいいと思うんですけどね

もちろん林さんの発言そのものが残念であるという意味ではありません。残念なのは日本人一般の考え方として、「決めてもらわないと行動できない」という発想になっていることです。

時代やシチュエーションによっては「決めてもらわないと行動できない」にも分があることは確かです(日本の高度成長期や軍隊・警察などが典型的な例でしょう)。ですが前世紀まででは考えられなかったほどモノが満たされてしまうと、「決めてもらわないと行動しない」教育もさすがに限界に達していると思います。

青野社長と林課長の対談を読んでいると、「決めてもらわなくても行動できる」人材が不足していることをビンビンに感じます。そういう意味でスウェーデンの小学校社会科の教科書は非常に参考になるのではないでしょうか?