確かに紹介されている成功企業のなかには、freeeやBASEなど、すでに名前が売れているような企業が上がってきます。ただし自分が読了したときの感想は「ずるい」です。
ずるいと感じる理由は?
「ずるい」と感じたのは、積極的に情報を集めリスクを取って起業をされたビジネスパーソンの方のことではありません。その気持ちを抱いたのは著者と編集者に対してです。本の構成に不満があります。
確かに本書で紹介されているような、フィンテック界隈で活躍されている起業家のご尽力によって、金融にアクセスしやすい環境は整いつつあると思います。ですが金融リテラシーが低い方に対する基本的な教育(経済・金融・投資教育)については、あまり触れられていません。
「自社」の投資教育は紹介しないの?
なぜ自分がそんな意見をするのは、著者が代表取締役を務めていらっしゃるSBIホールディングスには、確定拠出年金法に基づいた運営管理機関である、SBIベネフィット・システムズ株式会社という会社を傘下におさめているからです。
SBIベネフィット・システムズは確定拠出年金制度の普及をする運営管理機関です。確定拠出年金年金法には、自助努力による年金資産の構築のを支援するために投資教育の義務が定められています。
SBIベネフィット・システムズが主導となって確定拠出年金制度を導入した企業には、投資に関わる金融教育のノウハウが貯められているのではないでしょうか(個人的な推測ですが)。そのノウハウを供出せずに、成功したフィンテック企業だけを紹介するのはいかがなものかと感じました。
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少なくとも「機会の公平性」を保つ(情報格差の是正を行う)ために、経済・金融・投資教育サービスに提供する企業を紹介しても良いのではないかと訝しく思います。
次作で「経済・金融教育サービスのフィンテック企業」の紹介を!
本の構成についての不満が感想のように見えます。ですが裏を返せばフィンテック企業のひとつとして、経済・金融教育サービスを提供する会社が探せば1つぐらいあるだろうという期待の表れでもあります。
本書の主旨はフィンテックで成功した企業の紹介だったかもしれません。次作ではフィンテックによって恩恵を受けた一般消費者、特に経済・金融リテラシーが上がった例を紹介していただきたいと思っています。