【読書感想】宅配クライシス

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宅配クライシス」を読んでいて気になることが1つありました。物流業界1位のヤマト運輸と2位の佐川急便に関する取り組みはたくさん紹介されていますが、3位の日本郵便の取り組みはほとんど言及されていません。するとP.197にこんな記述がありました。

「従業員に過重労働と低賃金を強いるビジネスモデルは続けられない」。2017年9月6日、東京・霞ヶ関の日本郵政本社で記者会見をした横山邦男・日本郵便社長は、宅配便「ゆうパック」の基本運賃引き上げを発表をした。

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日本郵便のビジネスモデルは「武士の商法」

社長さんのコメントはそれ自体、至極真っ当な内容であると思います。ですが市況かぶ全力2階建のまとめを読んだ後に、改めてこの箇所を読むと失笑を禁じざるを得ません。

人手不足で対応しきれないヤマト運輸や佐川急便の荷物が日本郵便に流れて、ゆうパックの現場は「爆発」しているそうです。一方でJRの駅ナカやショッピングセンターなどで必ず2人体制で年賀状を売りまくっている光景は、奇妙を通り越して滑稽にすら見えます。

シェア拡大のみにひた走り、明治開闢(めいじかいびゃく)以来のメンツを保つビジネスモデルは、まさしく「武士の商法」ではないでしょうか。明治政府とともに誕生した郵便事業は中央集権国家を確立するための一大プロジェクトであり、「国営化」することがまさに「錦の御旗」でした。

ですが時代は大正、昭和、平成、新しい元号と流れて、今は「錦の御旗」として「民営化」を掲げれば「官軍」扱いされる風潮です。果たしてこの風潮はいかがなものでしょうか?

日本郵便は赤字覚悟の国営企業に戻して信書便事業に専念すれば?独占事業として食いっぱぐれはないだろうし」という読後感を味わいました。

そのうち年賀状の風習も廃れるかも

この本を読んでいると、物流は社会のインフラであることがサービスの需要者も供給者も強く認識されています。配送要員の休憩時間を確保するために正午から14時までの配達取り止めもやむなしという雰囲気が感じられます。一方で、日本郵便の中でゆうパック事業に従事されている方はかなり疲弊されているようです。

こういった現状を鑑みれば、そのうち世間は「年賀状を出すのも控えようか」という風潮になるかもしれません。個人的には日本郵便が物流業界のシェア拡大だけにこだわる限り、明治時代から続いた年賀状の風習も近い将来に自然と廃れると考えています。

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