自分は生まれも育ちも大阪府です。この本で言うところの「本土」の人間です。「本土」とは単に地形のことに止まらず、米軍基地問題について自分は関係ないと思っている人の比喩でもあります。
沖縄県民斯ク戦ヘリ県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ
そのことを踏まえた上で、「沖縄問題、解決策はこれだ! これで沖縄は再生する。」は話の「つかみ」が絶妙です。大阪生まれで大阪育ちの橋下さんが沖縄問題について勉強して語っても、政治家時代にご本人が嫌った「インテリ」呼ばわりされかねません。
沖縄問題を考えることの重要性を前・大阪府知事、前・大阪市長が説くのではなく、沖縄戦で亡くなった先人の言葉を引用して説かれています。
沖縄県民ノ実情ニ関シテハ県知事ヨリ報告セラルベキモ県ニハ既ニ通信力ナク三二軍司令部又通信ノ余力ナシト認メラルルニ付本職県知事ノ依頼ヲ受ケタルニ非ザレドモ現状ヲ看過スルニ忍ビズ之ニ代ツテ緊急御通知申上グ
(中略)
是ヲ要スルニ陸海軍部隊沖縄ニ進駐以来終止一貫勤労奉仕物資節約ヲ強要セラレツツ(一部ハ兎角ノ悪評ナキニシモアラザルモ)只々日本人トシテノ御奉公ノ護ヲ胸ニ抱キツツ遂ニ□□□□与ヘ□コトナクシテ本戦闘ノ末期ト沖縄島ハ実情形□一木一草焦土ト化セン
糧食六月一杯ヲ支フルノミナリト謂フ沖縄県民斯ク戦ヘリ県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ
この文章は、沖縄戦の当時、沖縄根拠地隊司令官だった大田實海軍少将(死後、中将に昇進)が海軍省の海軍次官に宛てて発信した電文です(現代語訳はWikipediaを参照)。
橋下さんは冒頭でこの電文を引用されています。その後も「沖縄県民斯ク戦ヘリ県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」と言う箇所を何度も引用されて、議論の軸に据えています。
人間の感情も動員する「沖縄問題、解決策はこれだ!」
太平洋戦争末期に沖縄で米軍との戦闘があったことは、多くの人が知るところでしょう。その事実と故人の言葉でもって、「本土の人間」を話の中に引き込むような書き方をされています。
所詮、人間は法律や経済の理屈だけでは動きません。最終的には感情で行動を決める動物です。日頃、ブログサイトを使ってものがきをしている人間として、橋下さんの文章テクニックは、ぜひ真似をしたい文章テクニックである思います。