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【読書感想】お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)

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経済学っぽいタイトルですが、どちらかというと政治思想の本だと思います。新しい経済ではどのように富が生まれ、分配されるかという問題に触れていますので。また仮想通貨に関する技術的な話もほとんど出てきません。自然の生態系・経済・脳など自然科学から社会科学に至るまで、専門用語をほとんど使わずに平易に説明されていて大変分かりやすい本です。

自分自身も2時間ほどで読了しましたが、佐藤航陽さんはかなりの読書家と見ました。持たざる者(10~30代の人)が読めば目からウロコが落ちる内容ではないでしょうか。

「なぜ」を5回繰り返すことを身につける

ただし、その分かりやすさとは裏腹にこの本に書かれていることを実現することは、とても難しいと考えています。というのは佐藤航陽さんは年少の頃から、「なぜ」という問いかけを自分に内面に向けているからです。「お金2.0」で書かれているように、育った家庭が決して裕福とは言えず、日々のお金について大変苦労されていたせいでしょう。

まず「学校教育による洗脳」を解く

一方で子どもが日本の義務教育を素直に受けると、「なぜ」という単語を発すること自体がタブーという習慣が身につきます。ちなみに自分が中学1年の1学期で受けた体育の授業は、有無を言わさず行進練習(行軍演習?)だけでした。体育の先生が旧・日本陸軍の配属将校にしか見えなかったことが今でも目に焼きついています。

従って、大抵の人はまず「なぜ」という問いかけが、5回できるようになるまで「学校教育による洗脳」を解く必要があるでしょう。実際に「お金2.0」でも、佐藤さんは「貨幣のなぜ」を自分で問うて、シルビオ・ガゼルの「自由貨幣論」やフリードリヒ・ハイエクの「通貨の脱国営化論」に通暁されている様子がうかがえます。

オールジャンルで古典を読まなければならない

新しいルールに基づく経済圏に身を置きたいと考えるならば、今までに人類が培った人文・社会・自然諸科学の古典をかなり読み込まないといけないように感じます。

そうでないと全ての行動は「佐藤航陽さんが言っているから」という薄っぺらい言葉に集約されてしまいます。もし新しい経済圏で具体的に何か困ったことが発生しても、自分では対応できずに空の彼方に消えていくでしょう。

中央集権の枠から外れることについて

ところで、仮想通貨に興味がある方とお話をすると、「仮想通貨は中央集権の枠から逃れられるところが良い」という話題がよく上ります。たしかにビットコインに見られるように、意思決定のための管理者が不在であることに魅力を感じることは当然だと思います。

江戸時代の藩と藩札

ただ、「お金2.0」をよく読むと全くの管理者不在になるのではなく、「超ミニサイズの中央集権制度」がそこら中にできるというイメージです。日本史を例にすると江戸時代の天領や藩のような感じでしょうか。そういえば藩の中だけで通用する「藩札」という紙幣もありましたね。

中央集権から離れることのデメリット

また中央集権の枠から逃れることはメリットもある反面、デメリットもあります。枠から外れてルールに服さない分、服したときに得られるはずだった庇護も受けられません。

これも江戸時代を例として説明することができます。藩士が藩に止まっている限り武士の身分は保たれますが、脱藩した途端に「死罪相当の重罪人」です。中央集権の枠から外れることは、かつて土佐藩士であった坂本龍馬のように、誰かに「暗殺される」ことも辞さないような覚悟と準備が必要であるように感じます。

古いルールと新しいルールの「両論併記」

もっとも、佐藤さんのように「中央集権」か「分散」かという問いかけを世の中に発することは大歓迎です。お金という中央銀行が独占しているものについて、「なぜ」と問いかけを発することは停滞した社会を打ち破る貴重な一石でしょう。

ただ個人的に少なくとも数十年間は、「既存の経済のルール(あちら側)」と「新しい経済のルール(こちら側)」の両論併記になると考えています。

理由は「新しい経済のルール」では、どうやってエネルギー資源に調達方法するかについて触れられていないためです。石油や石炭を使って発電ができなかったら独自の経済圏にアクセスすること自体が困難になり、「あちら側」の言いなりになってしまうのではないでしょうか。

従ってこれからの経済は「新しいルールに変わる」のではなく、「新しいルールも加わった両論併記」になるのではないかと推測します。そのことを自分の肝に命じ、「書を捨てて街へ出る」のではなく、佐藤さんのように「書を携え街に出る」つもりで世の中に働きかけていきたいと考えています。