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【読書感想】この世界の片隅に(上)・(中)・(下)

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先日、すでにTBS日曜劇場で2018年7月にドラマ化されるという記事(新しいタブで開く)を書きました。今回はその原作本の感想です。「この世界の片隅」には2016年にアニメ映画として公開され、声優としてののんさんの活躍と片渕須直監督が描いた精密な描写が話題になったことは広く知られているところでしょう。

太平洋戦争当時の日常生活

片渕須直監督は太平洋戦争当時に庶民が暮らした日常生活について細部にこだわった作品に仕上げましたが、その原点はこうの史代先生の原作漫画にあります。

  • やたらカサが多いだけの楠公飯(なんこうめし)
  • 類焼を防ぐための建物疎開
  • 主人公が着ていたアッパッパ
  • 闇市で売られている異常に高い砂糖の価格
  • 呉に米軍が来襲した時間

これらはすべて主人公である北條すずさんの目線で描かれ、原作漫画でもアニメ映画でも登場した日常生活です。

特徴ある表現技法

また原作本では様々な表現技法が試されています。上・中・下巻を通して読むと単にペンで描いたとは思われない技法が使われています。

  • 口紅で書く
  • 鉛筆で書く
  • 左手で書く

こうの先生は2018年に発売された「ギガタウン 漫符図譜(新しいタブで開く)」で「漫符」という概念を用いて、登場する人物やページやコマの雰囲気を4コマ漫画に基づいて説明されています。原作で読む「この世界の片隅に」は単にストーリーやアイデアが良いというだけでなく、「漫符」の概念と合わせて漫画の表現技法にチャレンジした「科学した漫画」であるとも言えるかもしれません。

TBS日曜劇場の表現に注目

「この世界の片隅に」は原作がクラウドファンディングでファンから多くの支持を集め映画化された作品でもあります。それだけに実写ドラマの方では、原作漫画やアニメ映画を超えるように期待とともにプレッシャーがかかっていることが予想されます。

TBS日曜劇場の枠は過去に「半沢直樹」・「陸王」・「天皇の料理番」など数々の話題作を世に送り出したドラマ枠です。中村穂香さん、松坂桃李さんをはじめとした出演者や、スタッフのみなさまが世間に寄せられる期待やプレッシャーにどう応えて表現するか、実写ドラマについても楽しみにしています。