この本を読んで特に印象に残った箇所は2つで、「教育の無償化」と「学校給食」についてです。前者はフランスの教育事情と日本の義務教育を比較して感じたことを、後者は宣伝がらみのネタをご紹介します。
「教育の無償化」について
個人的には「教育の無償化」について大賛成の立場です。特に初等教育についてはそれこそ身一さえあれば誰でも受けられて、なおかつ15才ぐらいまでは医療費の自己負担も「なし」で良いと思っているぐらいです。
初等教育は「正の外部性」が働きやすい
一方、高等教育にお金をかけるとギャンブル的な要素が含まれて、国費をポシャってしまう恐れがあるかもしれません(例:原子力や半導体)。ですが、文字の読み書き・初歩的な算数・論理的思考の訓練・心身の修養・外国語の習得などは、本人のためだけでなく、広く社会の役に立ちます。初等教育はミクロ経済学で言うところの「正の外部性」が働きやすいサービスです。
「教育の無償化」には比較が必要
この本を読んでいると、「日本は一体どこにお金を使っているのだろうか」と半ばあきらめ気味の記述があります。ですがそのセリフを持ち出すなら他の歳出と比べて、「教育の無償化」がいかに優れているかを語ってほしいところです。
日本で「教育の無償化」ができない理由
https://www.youtube.com/watch?v=K8q9Ts8pGDw財務省が作成した動画を見ると、日本政府が義務教育にお金を回さない三大理由は「社会保障」・「地方交付税交付金等」・「国債費」であることが分かります。どれを削っても目に見える分かるかたちで、すぐに国民生活が犠牲になります。
「教育の無償化」をするためには、文教費の話を持ち出すだけですむ話ではすみません。フランスでは自国の財政状況を勘案して、「教育の無償化」についてどうやって国民的な合意を取り付けているのでしょうか。非常に興味があります。
日本で「教育の無償化」をするのであれば、国民生活のどこに犠牲を強いるのか、また犠牲に対する見返りは何であるのか明確にする必要があるでしょう。
フランスの学校給食とBento文化
ところで、フランスの学校給食のくだりにおいて、非常に興味深い話題が出たので宣伝絡みの小ネタを挟んでおきます。フランスでは、もともと日本のような「お弁当文化」はなかったそうです。小さな子どもたちも食堂で学校給食をとるのが当たり前だったと説明されています。
ところが近年、日本からBento文化が輸入されて、フランスでお弁当箱を見ることも決して珍しくなくなったそうです。P.122の文章を引用しましょう。
しかし何年か前から、日本のランチボックスを倍くらいにした大きなものがそこそこのお店で見られるようになって、聞けばパリでも流行っているという。
ここで使われている日本のランチボックスこそが、日本から発送されているBentoであることが後の文章で紹介されています。
実はこのフランスのBento文化の一翼を担っている株式会社BERTRANDのCEOの方が、PayPalUserGroup(PPUG)大阪 #2 で2017年12月16日(土)に大阪市内で越境ECのセミナー講師として登壇されます。現在フランス国内で日本発のBentoがどのように認識されているのか、実に興味深いところです。
セミナーの詳細はconnpassのページをご覧ください。この記事を読んでフランスのBento文化について、興味をお持ちくださったからのご参加もぜひお待ちしています。