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【読書感想】アフター・ビットコイン: 仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者

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もうすでにビットコインが終わっているかのような挑戦的なタイトルです。ただしそのタイトルに値するだけの内容になっていると思います。中島先生が、燃え盛った火を冷静かつ確実に鎮火する消防士のように見えます。

ブロックチェーン技術について広く浅く知りたい人向け

仮想通貨やビットコインについて疑問に思っていたり、全く知らなかったことについて客観的事実に基づいた分析をなさっています。個人的に大変有用な知識を得られたと感じています。仮想通貨やビットコインの技術的な説明にしても、はじめての人が知識を得る上では、ちょうど良いボリュームだと感じています。

ただこの本の良いところは、現在のビットコインの実情や、ブロックチェーン技術(分散型台帳技術)を応用したデジタル通貨の研究について言及されていることでしょう。個人的には以下の3点について興味をひきました。

その1 「売る」・「買う」・「掘る」のほとんどが中国

2018年1月11日付のブルームバーグの記事にもあるように、世界のビットコイン採掘能力の約75%が中国にあります。中国に根拠をおく大手仮想通貨取引所(3ヶ所)だけで、ビットコイン取引高3社のシェアが、世界中の取引のうち93%も占めているそうです。

これほどビットコインの「売る」・「買う」・「掘る」が中国に偏る理由は、以下の3点であると中島先生は挙げられています。これらの事実を知って、ビットコインが少額で世界中に送金ができるというイメージがくつがえりました。

  • 資本規制の回避手段として使いやすいから(中国では人民元と外貨両替について上限規制が設けられている)
  • 電気代が安いから(1kw/hあたり米国は約12円、日本は約30円に対して中国は約4円)

もうご存知の方もいらっしゃると思いますが、2017年1月に中国の3大ビットコイン取引所に当局の立入検査が入り、ビットコインの引き出しが数ヶ月に渡って停止されました。

以降、中国でのビットコインの取引量は、今までの100分の1にまで減少したそうです。

その2 中央銀行の「デジタル通貨」発行について

中島先生は他にもビットコインの先行きがいかに不安定かを技術的な側面を語られています。ですがそのビットコインを支えるブロックチェーン技術(分散型台帳技術)については、大変期待をされています。すでに世界各国の中央銀行では、ブロックチェー技術を応用した中央銀行デジタル通貨の発行について研究を進めているそうです。

ちなみ「デジタル通貨」の構想や取り組みについては、15年ぐらい前から日本銀行などで行われているそうで、「え?もうやってたの!」と手回しのの良さに舌を巻きました。自分はまだ仮想通貨やブロックチェーン技術について、勉強し始めたばかりなので、とりあえず特記すべき事実を列挙していきます。

  • 中央銀行が発行する通貨は銀行券と当座預金。前者は紙媒体でできているがすでに「分散型通貨」の機能を有している(P.195)
  • 中央銀行が強制通用力をもつ「デジタル通貨(中銀発行の仮想通貨)」を発行することは課題が多い(P.201)
  • 課題を克服するために「RSコイン」という構想がある。中央銀行と個人の間に民間銀行を挟んで中央集権型と分散型のブロックチェーンを使い分ける(P.207)

その3 Rippleを使った国際送金

国際送金についてが高くて不便であることは全世界の共通認識のようです。自分自身もWordCampの運営をやっていて、アメリカにあるWordPress財団から受ける送金事務がやたらとややこしいことについて驚きました。

ある年のWordCampについてはコルレス銀行を経由した、SWIFT(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)を使っていたような気がします。この本を読んでいたら、SWIFTを使った場合、WordCamp財団(送金人)からWordCamp(受取人)が運営資金を受け取るまで、4つの銀行(送金銀行・中継銀行・コルレス銀行・受取銀行)が仲介します。

ということで、「高くて不便な」で定評のある国際送金業務を、「安くて簡単な」業務に変える仮想通貨に変えるRipple(リップル)についてかなりの紙幅が割かれています。

  • リップル社が主導になって、銀行同士をブロックチェーン技術のネットワークで結ぶリップル・プロジェクトが進んでいる(P.229)
  • このプロジェクトによって、送金人と受取人の間に(送金銀行・受取銀行)の2行しか介在しなくなる(P.230)
  • リップル・プロジェクトには5つの主要な構成要素がある。(P.232)
  • 1)「ILP(インターネットレッジャー)」:銀行が有する分散型台帳を接続して資金移動を行う仕組み(P.232)
  • 2)「リップル・コネクト」:参加行内システムに接続して、送金に関する「メッセージング」を行うモジュール(P.232)
  • 3)「ILPバリデーター」:参加行内システムに接続して、資金移動を検証するモジュール(P.233)
  • 4)「リクイディティ・プロバイダー」:外貨との交換レートを呈示して、交換が生じたときに参加行の中でもっとも有利なレートで通貨交換を行う仕組み(P.234)
  • 5)「仮想通貨・XRP」:リップルのネットワーク上で使われるデジタル資産。リップルネットワークでブリッジ通貨の役割を果たす
  • 一連のシステムを使うと1件500ドルの送金について5.56ドルかかっていたものが、2.21ドルにまで下がる試算が出ている(P.234)

感想の感想

ここまで本に書かれていることを箇条書きにして、書き連ねてきました。自分が箇条書きをした中で印象に残るのが、リップル・プロジェクトです。ブロックチェーンを使った技術で、最も実現性が高いからです

送金人
↓
送金銀行
↓ ←(仮想通貨:XRP)
受取銀行
↓
受取人

リップル・プロジェクトでは、ビットコインのようなパブリック型のブロックチェーン技術を使うのではなく、プライベート型のブロックチェーン技術を使うことによって送金の仲介者が減りました。

送金人
↓ ←(仮想通貨:BTC)
受取人

ビットコインは仲介者なしの送金が期待されていたと思います。ただ「アフター・ビットコイン」を読んでいると、この構図は実現が難しいようです(どこがどう難しいかはぜひ本書を読んで調べてください)。

送金人
↓
信用できる中継業者(仮想通貨:XRP or ?)
↓
受取人

ですがこの送金はBTCのときよりも現実的な案だと思います。サービスの受益者の間に業者が1つしか入らないので、理屈の上では手数料をもっと下げられるかと思います。

なおかつ業者は銀行でなくても良いと考えています(銀行の人件費が高いから)。そのうち、銀行業の免許を持っていないAmazon・Facebook・PayPalあたりがやるかもしれません。RippleのxViaを見ていると、(日本の法律の問題は別として)事業会社でもできそうな感じがします。