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【読書感想】中南米野球はなぜ強いのか――ドミニカ、キュラソー、キューバ、ベネズエラ、MLB、そして日本

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「日本のプログラミング教育と中南米の野球による教育はどっちが良いか?」。どっちが良いかなんて質問は極めてナンセンスです。「そんなこと分かりません」というのが大方の見方ではないでしょうか。

なので質問を変えます。「義務教育として進める日本のプログラミング教育と、民間主体で進める中南米の野球はどちらが国民全体に普及しやすいでしょうか?」この質問ならば答えやすいでしょう。正解は「後者」だと思います。

中南米で野球が普及しやすい理由

中南米で野球が国民の隅々にまで普及するのは、3つ理由があると思います。正確に言えば4つだと思いますが、それは「身体的な潜在能力」なので除外します。

国が極めて貧しい

どの国もこれといった産業もなく、海外に出稼ぎで外貨を獲得して家族を養わなければなりません。まあこれはなんとなく想像がつきます。

かつて中日ドラゴンズに在籍していたネルソン投手は、森繁和さんにわざと安い焼肉をご馳走された上で、「日本で活躍すればもっと良い肉が食えるぞ」という言葉に釣られて来日されたそうです。

ちなみにそのネルソン投手は来日当初、投手用の守備練習で右利きなのに、右手でボールをとっていたそうです(つまり左手にある捕球用のグラブを使わず素手で打球をとっていたというそうです。もちろん大変危険なプレー)。

社会秩序の安定のため

ネルソン投手のように粗削りでも、華やかな舞台(MLBやNPB)で活躍して一流選手になれるのは、ほんの一握りです。いくら身体的能力に優れていても、MLBで活躍できるのはドミニカ共和国で12万人、オランダ領キュラソーで2万5千人に1人の割合です(ちなみにアメリカでは53万人に1人の割合)。

もちろん国民の方もそんな「夢」を掴める確率は、ほんのわずかであることは分かっています。ではなぜみんな野球をするのでしょうか?それは野球を通して、語学を学んだり、集団生活の規律を守る習慣を身につけたりすることによって、良き社会人になれることが分かっているからです。

日本の高校野球でもそれっぽいことは、「文武両道」ということで表現されます。ですがその切実さは日本とは格段に違います。中南米で野球による「文武両道」ができなかったら、殺人、強盗、麻薬売買などが横行して社会が崩壊します。誰も得をしません。

政府の押し付けではないから

ドミニカ共和国とキュラソーに限って言えば、特に政府が義務教育として野球を課することはしていません。

ドミニカ共和国の場合

どこにでもいそうな街の野球好きなおっちゃんやMLB帰りの元選手が、手弁当やささやかなコーチ料を徴収して民間主体でチームや教室を運営している印象があります。彼らは、単に「子どもたちに夢」を掴ませてあげたい」という願いだけでやっているわけではありません。子どもたちに野球を教えてあげたら自然と礼儀を身につけたり、しつけが出来て社会全体に貢献できるという感じで自然発生的に運営をしているという考え方です。

オランダ領キュラソーの場合

キュラソーの場合はもっとビジネスチックです。MLB(サンディエゴ・パドレス)が最新の施設を備えた野球アカデミーを開設して、将来のメジャーリーガーを養成しています。キュラソーは島の領域が狭く、人口も15万人しかいません。パドレスの関係者は有望選手を効率よくじっくり見て回れることに魅力を感じるとのことです。

「押し付け」よりも「自然発生」で

冒頭と同じ質問をもう一度してみます。「義務教育として進める日本のプログラミング教育と、民間主体で進める中南米の野球はどちらが国民全体に普及しやすいでしょうか?」。答えはこの記事を読んでいただいた方のご判断にお任せします。

なお、この記事全体の内容として、ドミニカ共和国とオランダ領キュラソーを例として感想を述べています。キューバとベネズエラに関しては読んでいません。両国を含めるとまた違った印象になるかもしれません。悪しからずご了承ください。