【読書感想】決済から金融を考える

settlement service

個人的に銀行の業務と聞くと「預金」・「融資」・「為替」と言うイメージが強いです。なので「決済」を切り口とするこの本の内容は非常に新鮮でした。元・大蔵省の官僚さんが書いている本なので、どんなに堅い話をされるのかと思えば全くそうではありません。むしろ口頭で語りかけるような平易な文章なので、割と苦もなく読めると思います。

目次

日本人はなぜ「諭吉くん」が大好きなのか?

「日本人は現金志向(現ナマとして諭吉くんをそのまま使うこと)が強いと言われますが、なぜそうなるのか銀行システムの面から説明されています。

決して「日本人の精神性」などとあいまいな表現に終わらず、素人でも分かるように解説されていることに好感を覚えます。自分が本書を読んだ限り、日本人が「諭吉くんLove」で紙幣を使いたがる理由は以下の通りだと思います。

  • 銀行券の利用を前提とした銀行実務の残滓が残っているため(総勘定元帳と預金通帳への記帳を前提とするシステムを使っていること)(P28)
  • 銀行決済は振込が中心で引き落としの機能が限定されているため(個人に対する信用供与を嫌がる慣行の存在)(P29)
  • 情報セキュリティの基準統一について各銀行が乗り気でないため(基準を統一するとシステム構築のコストがかかって経営を圧迫する)(P49)
  • 振込後の着金が平日の7時間に限られていた時期が長らく続いたため(P131)
  • 振込に関する付記情報に制約があり、モノやサービスの購買に適していないため(P131)
  • 入金後の通知は利用者が預金通帳の記帳をしないと分からないため(本残主義)(P131)

これからの決済サービスと比べる上での参考書

今後、PayPalStripeのような新興の決済サービスを利用する時に、従来から存在する銀行の決済サービスと比べることも多くなるでしょう。そういった観点から見ると、今日明日には役に立たない知識でも、読んでおいて損はないと思います。何かと示唆に富む本であると思います。

【参考サイト】

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