【読書感想】抗命―インパール 2 (文春文庫)

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先日、NHKスペシャルで「戦慄の記録 インパール」という番組を見ました。内容が大変興味深かったので、地元の図書館の書庫から引き上げてもらい読んでみました。かなり日に焼けてボロボロの状態でしたがw

番組も本も死臭が漂ってきそうな内容でしたが、本の方は人間の臭覚だけでは嗅ぎ取れないイヤな臭いが漂ってきました、「組織の腐敗」です。

目次

組織とは何か

Wikipediaで組織(社会科学)について調べると、概要でこのように説明されています。

社会科学における組織は、共通の目標を有し、目標達成のために協働を行う、何らかの手段で統制された複数の人々の行為やコミュニケーションによって構成されるシステムのことである。

もし他の人から「組織についてどう思うか?」と問われたら個人的にこう答えます。

  • 組織というものは最初に「目的」があり、その「目的」を適えるために「目標」が存在する
  • 「目標」を達成するために個々の具体的かつ明示的な「任務」が明確に定義される
  • 組織の構成員はその立場において定められた「任務」を遂行しなければならない
  • 「任務」を遂行しなければならないという意味においては、構成員は平等である

組織の定義にはまらない旧・日本陸軍

ところがこの本を読む限り、旧・日本陸軍にはWikipediaや自分の定義にも全く当てはまっていません。自分が感じた旧・日本陸軍の印象は以下の通りです。

  • 兵、下士官、尉官クラスの下級将校の順番で階級が低くなるほど「任務」に忠実
  • 佐官クラスの中堅将校になると「目標」を忘れて思考が停止する。参謀の場合、都合よく変節する(ただし変節しない人は左遷される)
  • 将官クラスの高級将校になると「義理人情」や「好き嫌い」で「目的」が決まる。構想というより妄想か個人的な願望が頭の大半を占める(一部例外あり)
  • ライン(司令官)の暴走をスタッフ(参謀)が止められない
  • 暴走するスタッフは科学的根拠がなくても「積極的」として優遇される。しかもラインは口を挟まないことが「大人の態度」として評価される
  • 会議をするとラインもスタッフも、合理性は分かっていても作戦実行の可否はその場の空気で決まってしまう

反面教師の本としてどうぞ

旧・日本陸軍の軍人さんは階級が上がるたびに「星と金線」の数が増えました。でも階級章がきらびやかになるごとに、軍人さんは本を読んで思索を深めるという作業をしなくなっていったのでしょうか?全員がそうでなかったと祈るばかりです。感想を書いているうちに、21世紀に生きる自分もどこかでこんな臭いをかいだような気がしてきました。

戦前のエリート学生は「陸士(陸軍士官学校)・海兵(海軍兵学校)・帝大(東京帝国大学)」に進学することが相場として決まってたそうです。でも、人間って組織次第でどうにでも変わるんだなぁとしみじみ思いました。この本の内容はこれから生きていく上での「反面教師」といたします。

【参考サイト】

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